ゲンジボタル幼虫飼育
 -簡単な小規模飼育マニュアル-
はじめに

この手引きでは、だれでも簡単にできる小規模なゲンジボタルの幼虫飼育方法を紹介します。
ゲンジボタルの幼虫は清流に棲む水生昆虫で、人工飼育をするには、専門的な知識と本格的な設備が必要と思われがちですが、そんなことはありません。
数十匹までの小規模な飼育であれば、特別な道具や飼育システムが無くても、簡単に幼虫の飼育ができます。
興味のある方はこの手引きを参考に、ぜひチャレンジしてみましょう。
準備するもの

@ 幼虫飼育ケース    ・・・・・・・ 1個
A カワニナ飼育ケース  ・・・・・・・ 1個
B 10L程度のバケツ  ・・・・・・・ 1個
C ピンセット      ・・・・・・・ 1本
D スポイト(大)    ・・・・・・・ 1本
E スポイト(小)    ・・・・・・・ 1本
F 植木鉢のかけら    ・・・・・ 2〜3枚
G ナイロンチューブ   ・・・・・ 2〜3本
H 小さなケース     ・・・・・・・ 1個
I ペンチかプライヤー  ・・・・・・・ 1本
飼育ケースは、市販のプラスチックケースよりも発泡スチロールの箱のほうが使いやすいです。
その他の備品も代用できるものでかまいません。
セッティング

幼虫飼育ケースに5cmぐらいの深さになるように水を入れます。
使用する水は、水道水を汲み置きしてカルキを抜いたものか、井戸水です。井戸水を使う場合は、酸素が不足している場合があるので、よく混ぜて水に空気を溶かしてから使用します。
次に植木鉢の割れたものを2,3枚入れます。使用する鉢のかけらは、あまり高さのないものを選びます。
ホタルの幼虫は夜行性で、昼間は石の隙間など非常に狭い場所にたくさん集まってじっとしているからです。
幼虫飼育ケースの準備は以上です

カワニナ飼育ケースにも同じように水だけを入れ準備完了です。カワニナ飼育ケースには、植木鉢のかけらはいりません。
両方の飼育ケースを、直射日光の当たらない場所に置きます。屋外でも屋内でもかまいません。少し高いところに並べて置くと、後の作業が楽にできます。
ホタルの幼虫のエサはカワニナという巻貝で、幼虫のサイズにあった大きさのものを食べながら、脱皮を繰り返し大きくなります。
幼虫飼育ケースに、ちょうど良いサイズのカワニナを幼虫の数よりすこし少なくいれます。
カワニナのエサは、水がよごれやすくなるため必要ありません。

幼虫飼育

幼虫が食べたカワニナの殻が目に付けば、ピンセットなどで取り除き、カワニナを適量補充します。
取り除いたカワニナはすぐには捨てずに、水を入れた一時保存用の容器に1日程度入れておきます。
これはカワニナの殻の中に、ホタルの幼虫が隠れている場合や、食べられたと思ったカワニナが生きていた場合、捨ててしまうことを防止するためです。
一時保存容器内に幼虫を発見した場合は、スポイトで吸い取り、飼育ケースに戻します。

このような管理を繰り返しながら、時々水替えをする
だけで、ホタルの幼虫はどんどん大きくなります。
水替え

ホタルの幼虫を飼育しているとだんだん水質が悪くなりますから、時々水替えをします。
夏の水温が高い時期は2〜3日ごとに、秋以降は水温が下がるので1週間に1度程度水替えをします。
水替えはサイフォン式という方法で、下に置いたバケツにチューブで水を抜き、その後用意しておいた新しい水を、元の水位まで入れます。
幼虫やカワニナを吸い込んでしまった場合は、スポイトやピンセットでケースに戻します。

カワニナの管理

カワニナ飼育ケースのカワニナは、基本的にはエサを与えません。エサを与えると水質が悪くなり、頻繁に水替えを行わなければならないからです。
水替えの頻度は数日に1回ですが、ホタルの幼虫と同じように季節により変化します。少し濁りが出たり、臭いがするなど、変化があれば水替えを行います。
死んだカワニナを見つけた場合は、速やかに取り除きます。
水替えはケースを傾けて水を捨て、新しい水を入れるだけです。カルキ抜きもあまり気にしなくても大丈夫です。

ケースの大きさに対して、カワニナが多すぎる場合はカワニナの寿命が短くなる傾向にあります。
このような場合、頻繁に水替えをするとともにエサを与え、エアレーションも行うことで、水質の悪化を防ぎカワニナの寿命を伸ばすことが出来ます。


幼虫のエサやりの工夫

ホタルの幼虫が小さいとき、その大きさに合うカワニナの都合がなかなか付かない場合があります。
ホタルの幼虫は飢えに非常に強く、1ヶ月以上何も食べなくても生きているので、あまり心配いりませんがその間は大きくなりません。
翌年成虫になるためにはじゅうぶんなエサが必要です。
幼虫に対して大きなカワニナしかない場合は、カワニナの殻をプライヤー等で軽くつぶして与えます。
カワニナは自由に動くことが出来なくなり、小さな幼虫でも大きなカワニナを食べることができます。
ただし食べ残しが多くなり、水質が悪くなりやすいので、水替えを頻繁に行うことが必要です。


その他の注意点と工夫

●水温が上がり過ぎないような場所を選ぶ
できれば水温25℃以下になるようにする。冬は凍らないようにすれば大丈夫です。

●冬の間に大きく育てる
ホタルの幼虫は、水温が下がる冬にはほとんど活動しなくなります。それまでにじゅうぶんに育っていない幼虫は春にサナギにならず、もう1年水中ですごします。多くの幼虫を1年で成虫にするには、成長の遅れた幼虫を、冬の間も暖かくしてエサを食べさせることです。家の中のどこが暖かく、温度変化が少ないかを考えて飼育します。カワニナも冬は手に入れにくいので、それまでに多めに確保しておくことが必要です。

●明るすぎない場所で飼育する
作業をするとき意外は暗くなるように工夫することが必要です。ホタルの幼虫は夜行性です。夜に照明があたるような場所は、活動時間を短くし、成長の遅れの原因となる可能性があります。


●場所に余裕があれば、選別する
幼虫を飼育していると成長に違いが出ます。こんな時大きいものと小さいものを分けて飼育すると、小さい幼虫が早く大きくなります。

●幼虫は小さなケース、カワニナは大きなケース
ホタルの幼虫は狭い場所に密集して生活するので、ケースが小さめの方が成長しやすいような気がします。カワニナはケースが大きく密度が低い方が長生きするようです。

●エビを入れると水質安定
スジエビやヌマエビを2〜3匹一緒に飼うと、食べ残しを掃除してくれるので水質が安定します。カワニナを潰して与えるときには、大変ありがたい存在です。
カワニナ飼育ケースにも入れておいたほうが、水質が安定します。

ホタルからのプレゼント

発泡スチロールで飼育している場合、夜に真っ暗な状態でフタをあけてみてください。フタと本体のこすれる振動が刺激となって、幼虫が光るときがあります。
真っ暗な中で、黄緑色の光がいくつも燈って、とてもきれいです。ホタルの幼虫を飼育するものだけが見ることの出来る神秘的な瞬間です。
本マニュアルは以上ですが、みなさんでいろいろ工夫してみてください。新しい発見があるかもしれません。
福田川戦隊 フクレンジャー通信