過疎の村 故郷里野よ蘇へれ
                  
FCR相談役 佐向恒雄


昔の夢懐かしく
訪ね来てみる故郷の
山河昔のままなれど
公共老ひて人影もなく
昔を語る友いずこ
野猿の騒ぐ声悲し

小学校に来てみれば
我を育てし学舎も
時の流れに逆らえず
歴史を閉じて幾星霜
校舎の跡に佇めば
松ヶ枝渡る潮風に
思ひ出胸に蘇へる

村の鎮守に手を合わせ
瞼閉じれば浮かびくる
村は総出の秋祭り
祭囃子や笛太鼓
御輿の宮入り獅子舞や
社に残る幻か

墓参終わりて帰り道
菩提の寺に立ち寄れば
本堂庫裏の戸は閉まり
無住の寺となり果てて
寺を拓は一年三度
春秋の彼岸盂蘭盆会
佛供養の時と聞く

あゝ故郷よ蘇へれ
朝日輝く蜜柑山
夕日に映える柿山や
大漁祝いに湧く浜辺
磯波洗ふ太公望
丸太の積み出し音高き
夢の絵巻よもう一度